埴谷雄高・写真集
死霊第九章・未定稿より
與志さん、この生命があり、考えがある世界で、同じ時、同じ所に、居あわせることになってありがとう。
どういっても、心の底の底を尽くせぬほど済みませんけれど、ありがとう。
津田安寿子はそこで言葉を切った。
三輪與志と津田安壽子の二人の影は、月光のなかで、影と影こそが実体であるかのような私達の精神を月光のなかに浮き出させながらなおも月光の奥へ奥へ踏みいっていった。
《死霊》 了
Kの昇天(梶井基次郎)の様に・・・